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【円を描く】
学生のころ、チェーンのドーナツ屋さんでアルバイトをしてました。
その時の先輩に、かずちゃんと言う絵の上手な人が居ました。
かずちゃんは、ドーナツ作りも一番上手でした。
どうやったら、かずちゃんの様に上手く作れるのか尋ねた事があります。
「弟子になる?」「はい、アニィ!」とその日から、
バイト料はもらえない弟子になりました。
それでは、と渡されたのがデコレーション用の生クリームが入った袋でした。
パン生地に近い直径8cmくらいの穴のないドーナツにクリームで円を描けとのこと。
やってみると、綺麗な円になりません。綺麗な円にするには、
クリームの軟らかさ、描くスピード、絞り出すスピード、
円にそった手首の返し、フィニッシュのスピードが必要です。
それらが一体とならないと、蛇が這ったようなクネクネの円になります。
毎晩毎晩、弟子入りして、ようやく一週間目に一個合格が出ました。
すると立て続けにどうやっても上手くかけるのです。
かずちゃんは、ニヤリとして言いました。
「これが出来たら、ドーナツ作り全部上手くなってるよ」
「ほんとかな〜?」……本当でした。
一週間集中して綺麗な円を描いた事で、技術も上がったんですが、
変わったのは下手なドーナツを作りたくないと言う気持ちでした。
人間、一つの事が出来ると欲が出ちゃうんですね。昔の思い出です。
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